敵こそ、わが友

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銀座テアトルシネマで。
ナチの戦犯の戦後数十年にもわたり生きたその比類なき人生を通して、戦争の暗部を照らすドキュメンタリー。
ゲシュタポとして行ったさまざまな残虐な行為を冷酷にこなした若い日々、CICに必要とされてアメリカのために有益に動いた時代、そして南米軍部の影で活躍した30年ものボリビア時代。
それぞれの時代に彼の残した足跡は、背筋も凍る血塗られたものだけれども、一方で、その頭のよさ、どんな冷酷なことでも実行できる覚悟、軍を統制する苛烈な手段、経験については他の追随を許さない人だったのだろうとも思う。

70を超えた彼がフランスで受ける裁判の模様は、あきらからに感情論に傾いた意味のないもののように思えた。
「わたしを必要としたのは大勢の人々なのに、裁かれるのは私一人だ。そこに偽善を感じる」というバルビーの言葉。

確かにバルビーの行ったことは許されるようなことではない。けれども、その彼が裁かれたのは87年になってから。この男とともに戦争を続けさせていた力は、決して裁かれることはない。この矛盾を体現したかのような彼の姿に、その闇の深さを思う。

国家とは、人とは、そして平和や平等について。

考えることはたくさんある。