鏑木清方

サントリー美術館鏑木清方を観る。
毎年夏になると国立近代美術館の常設で鏑木清方の夏の一幅を観るのが、私の夏の涼をとる定番。なんとも夏らしい、なのに涼しげな西瓜を描いた作品に夏っていいなぁと思える。

で、今日たまたまあいた一時間をこの鏑木清方にあててみようと思いつく。

さて、展示内容といえば…
満足満足。文句なしの美人画。透明感と色気と、着物の精密かつセンスのあるセレクト。そしてなにより季節感。あふれだすほどの季節感が一枚一枚の絵からあふれ出していて、だからこの人の絵が好きなのだ。

鏑木清方は、明治から大正、昭和初期まで活躍した作家であるのに、江戸時代を感じさせる。それは作家が、文化、文芸、風俗、画風に至るまで江戸の時代に深い造詣と憧憬があったからなのでは。江戸時代に薫る無責任で必死な感じの美しさにとてもとても惹かれるので、そのことも鏑木清方が好きな理由の一つ。

昔、中年のインテリに「江戸時代の人なんじゃないかと思うことがある」と評されたことがある私は、鏑木のこの言葉に心打たれる。
『絵をつくるに、私は一たい情に発し、趣味で育てる。絵画の本道ではないかも知れないが、私の本道はその他にない』(『鏑木清方文集』「そぞろごと」より)。
情に発し、趣味で育てる。
ストイックに道を究める、という姿勢を見せないところ、しびれちゃう。