これは本ではない

うらわ美術館に「これは本ではない」を観に。結論から言ったら素晴らしかった。

浦和だし?ということで、あまり注目しきれていなかった美術館だけど、すごく骨のある企画を過去にもしているようで、御見それしました。うらわ美術館で開催中の展覧会。来年、福井市美術館に巡回。

タイトルどおり、本をテーマにした展覧会。ブックオブジェからインスタレーションまで、14作家、140点。
知らなかったのだけれど、うらわ美術館は収集のテーマのひとつが「本をめぐるアート」なのだとか。面白い。

ルネマルグリットの「これはパイプではない」を参考作品として、高らかなコンセプトを示して、
そのあきらかな表現としてのTHIS IS A BOOK.が最初の作品、という期待できるはじまり。

陶という表現手段でしめされる、オモイを焼きつけるような作品たちも興味深いし、堆積、凝縮、焼失、といった時間と本との関係にも考えさせられる。
また、繰り返される焚書というモチーフの禁忌のイメージ。
本という素材の、物語そのものともいえる厚みに心躍る。

今回一番目をひくといってもいい、大規模展示、渡辺栄司の「蝶瞰図」は視覚的にも単純に美しく、
本の頁から飛び出す言葉、昆虫と言葉という正統派の連想が視界いっぱいに広がるのって、快感。

作品それぞれにいちいち夢中になりながら、観て回れる展覧会はひさびさ。
ああ、楽しかった。

思わずカタログも買ってしまいました。

主催者ごあいさつの中にあった
『「本という経験」は、新たな地平へ移行しつつあります。そこでは読書という「思考」は、思考を欠いた知識の獲得、つまり検索という操作にとって代わられようとしています。』なんて一節。
的確で、痛快。そして、そういう時代だってわかっているけど、紙の本と関わることは、アートな行為だということはきっと真実、と思わせる美しい展示。
あんまりにも空いてたので、もっとみんなに勧めなくっちゃとおもった展覧会。


そういえば、本を焼成したらあんな風に?ってかなりびっくりしたのは、西村陽平の作品でした。謎の技術…そして文庫がキャラ通りに焼きあがっていて面白い。

二葉亭四迷の四角ばった感じとか、武者小路実篤の友情のくっちゃくちゃな感じとか、天平の甍の風な感じとか。